まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第217回】今年はカラ梅雨気味

2023年 7月31日

 6月は初めに何度か大雨に見舞われましたが、7月は一転、雨の少ないカラ梅雨気味な天気でした。
街は連日の猛暑ですが、標高1,100mの「まなびの森」も30℃近くの暑さとなっています。その暑さを少し和らげてくれるのがヒグラシの鳴き声です。涼し気にカナカナカナァ~と言う鳴き声はなんとも心地よいです。
 毎年、黄緑色のかわいらしいクモキリソウが林床に咲きますが、今年見つけたクモリキソウは苔むした樹の幹に咲いていました。まるで、暑さを逃れて苔の中で涼んでいるようでした。また、同じく毎年場所を変えながら咲くキバナノショウキランが今年は1ヶ所で13株もの大きな群落になって咲いていました。菌従属栄養の無葉ランであるキバナノショウキランが毎年予測不能な場所で花を咲かせるのがとても不思議で、それを探すのが楽しみの1つとなっています。
 ヒメシャラが沢山咲いています。いつもは地面が白い落花で敷き詰められたようになっていることでヒメシャラの開花を知りますが、今年は若い木もたくさん花をつけたことで初めて咲いているところを写真に収めることができました。
 「まなびの森」のシンボリックな樹「長老シナノキ」の辺りで甘い薫りが漂っています。いままで嗅いだことがない薫りです。「なんだろう?」と辺りを見廻してもわかりません。双眼鏡で見上げると20mほどの高さのシナノキのてっぺんで細かな白い花が沢山咲いているのが見えました。シナノキの花はとても甘い薫りがすると話には聞いていましたが、実際に体験するのは初めてでとても感激しました。更に、辺りを探すと、地面にシナノキの花が落ちていました。落花を拾って嗅ぐとやはり甘い薫りがします。
 今年は夏の「まなびの森」でも新しい発見が多くできました。

  • ヒグラシがズボンの裾に

  • 普通、林床に見られるクモキリソウが苔むした樹の幹に

  • 題して「木登りクモキリソウ」

  • キバナノショウキランの大きな群落

  • キバナノショウキランは菌従属栄養の無葉ラン

  • ヒメシャラの花を見るとツバキの仲間だとわかります

  • ヒメシャラのアップ

  • 蜜を吸いに小さなコガネムシが花に潜り込んでいます

  • 地面に落ちていたシナノキの花 落花もとても甘い薫りがします

【第216回】夏のよそおい、梅雨の季節

2023年 6月30日

 ウツギやエゴノキが白い花を沢山咲かせ、サンショウバラのピンクの花弁と美しさを競うようになると「まなびの森」も梅雨に入ります。ウツギのそばやエゴノキの下では甘い薫りに包まれ、思わず顔がほころびます。
 ヒメシャラとそれよりもう1廻り大きな花を咲かせるヒコサンヒメシャラもたくさん白い花を咲かせますが、樹上高い所で咲くので地面に落ちて来て初めて分かります。
 光合成をしない無葉ラン(菌従属栄養)のキバナノショウキランは毎年違う場所、それも予想できないほど離れたところで花を咲かせるのがとても不思議です。
 ちょうど目の高さで沢山のサルナシが花を咲かせました。秋にはミニ・キーウィーフルーツの美味しい実が食べられそうで、今から楽しみです。
 長老シナノキの傍に特徴ある野鳥の羽根が散乱していました。模様などからキツツキの仲間、アカゲラと分かりました。羽根が噛み切られているので猛禽類に襲われたのではなく、イタチの仲間テンに襲われたのでしょう。
 今年はコロナ禍の行動制限が緩和されたお蔭で「まなびの森」に子どもたちの賑やかな声が戻ってきました。この3年間は自然体験教室に来た子どもたちは静かに食事をしていましたが、今年はとても元気におしゃべりをしながら楽しそうに過ごしていました。
 また、富士市の団体による観察会にもたくさんの方にお越しいただき、富士山南麓の豊かで多様性に富む自然を堪能していました。
 6月22日には東京で富士山の世界文化遺産登録10周年の記念式典が盛大に行われました。10年前のこの日に世界遺産登録決定がプノンペンで発表されたのでした。
 こうして6月が慌ただしく過ぎていくうちに、「まなびの森」は夏山となってきました。

  • 「まなびの森」の6月を代表する花の1つ、ウツギ

  • エゴノキが沢山花を咲かせています

  • フォッサマグナ特有のバラ、サンショウバラ

  • 小さなコップ状のキノコ、シロキツネノサカズキ

  • 普段は林床に生えるクモキリソウが苔むした樹の幹に

  • 長老シナノキの傍に散乱していたアカゲラの羽根

  • 自然体験教室の子どもたちが作った「葉っぱのグラデーション」

  • 楽しそうに昼食を摂る子どもたち

  • 観察会に参加した皆さん

  • 今年はバイケイソウが沢山咲いていて、辺りに昔の粉せっけんの匂いが漂います

  • ヒコサンヒメシャラ(左)の花はヒメシャラ(右)より一廻り大きい

  • フォレストアークのすぐ近くに咲いたキバナノショウキラン

  • サルナシの花が沢山咲いたので秋が楽しみです

  • 世界文化遺産登録10周年記念式典の会場にて @東京

  • 世界文化遺産登録10周年記念ロゴ

【第215回】新緑からドンドンと深緑に

2023年 5月31日

 5月に入って清々しい新緑の季節となり、晴れた日には木洩れ日が鮮やかでマイナスイオンが溢れています。林床にはヤマシャクヤクやヤマクワガタ、クルマバソウ、ヤマトグサの花が咲き、サラサドウダンやカマツカと言った樹木も花を沢山つけています。中でも、ヤマトグサは日本固有種であり、現在放映中の朝ドラの主人公である牧野富太郎博士が第一号に和名をつけた植物として知られています。地味な花ですが、雄蕊(おしべ)がカンザシの房飾りのように垂れ下がり、風にユラユラ揺れている姿はなんとも可憐です。牧野博士が日本を代表する植物として命名したヤマトグサですが、日本各地で絶滅危惧種に指定されていると言う悲しい現実があります。
 今年は沢山のブナの実生が林床に芽生えています。場所によっては50㎝四方に30本以上芽生えているところもあるくらいです。ブナの実は多くの森の動物のエサとなります。そして、数年に1回動物が食べきれないほどたくさん実を付けて子孫を残そうとします。
 去年、初めて「まなびの森」で見かけたキイロスッポンタケが今年もたくさん発生しました。粘液状の胞子に異臭があり、その臭いに誘われて虫がやって来ます。キイロスッポンタケは虫媒花と同じ仕組みで子孫を増やしています。
 森が深い緑になっていくにつれて、オオルリ、コルリ、キビタキ、カッコウ、ツツドリなどの夏鳥の啼き声も賑やかになってきます。「まなびの森」はもうすぐ梅雨を迎えようとしています。

  • 澄んだ青空に新緑が目に眩しい

  • 林床を覆いつくすバイケイソウの大群落

  • 日本を代表する草であると牧野富太郎博士が命名したヤマトグサ

  • 今年はブナの実生が大発生 この写真の中だけでも10数本あります

  • キイロスッポンタケ 緑黒い胞子粘液が雨で洗い流され、色鮮やかな傘がハッキリ見えます

  • 今にも開花しようとする白いボールのようなヤマシャクヤクの蕾

  • ヤマシャクヤクが花開くとひと際美しい

  • ヤマクワガタの花をいくら眺めても名前の由来はわからない 実ができて初めてわかる

  • 可憐なサラサドウダンが今年はたくさん花を咲かせました

  • カマツカの花はきれいな梅鉢型

  • 5㎜ほどの小さな花を咲かせるクルマバソウ

  • 枝の先端でしきりに囀る若いコルリの雄

  • 背中や胸の黄色が鮮やかなキビタキは森の中では意外に見つけにくい
    ※野鳥の写真はいずれも先月に引続き「野鳥の会」会員の望月さんのご厚意で提供していただきました。

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